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このお部屋は、猫たちとの心が思わず、ほっとするような、感動するようなつきあいをご紹介します。
このお部屋は、投稿コーナーですので、どうぞ、すてき猫たちとのつきあいを投稿して下さいね。
ご応募、お待ちしております。

1.三毛猫三太郎

1.三毛猫三太郎(くらあぁぁさんのお母さんの投稿より)

     三毛猫太郎
 生き物の自然な生殖活動によれば、雄と雌の割合はほぼ同数と言うことになるのではないだろうか。牛馬、犬猫、小鳥、そして人間も。近年遺伝子の研究によって、その割合も変えることが出来る……とも聞くが。
 そのなかで面白いことに、三毛猫はほとんど雌であるという。毛色に優勢、劣勢の遺伝子要素があり、雌は三色共遺伝するが、雄の方は二色の遺伝となるらしい。突然変異としてライオンやトラに白毛が生まれて珍しがられると同様、三毛猫に雄が産まれるのは大変珍しい現象という。それは実に数万匹に一匹の希少価値とか。
 珍しい三毛猫の雄は海難を知らせるとして、海の男に特に愛されて大事にされたと言う。
 ある時、友人がその珍しい三毛猫の雄をもらってくれないか、と言ってきた。三毛猫に雄が産まれたが、既に五匹も飼っているのでこれ以上は飼えないという。犬や猫を見ると、 すぐ相手をする私を動物好きと見込んだらしい。事実、子供の頃から私の回りにはいつも犬か猫が居たし、祭りの夜店で買ったひよこが鶏冠(とさか)をつけてコケコッコーと刻を知らせる時期もあった。
 結婚後は転勤が多く社宅すまいでもあり、子供を育てることで精一杯という状態であったが、友人が猫の子の声が掛かったのは、丁度マイホームを建てたばかりの頃だった。畳を引っかいたり障子を破いたりする心配がある猫とは相性の悪い時期でもあった。
 それでも飼ってみようと思い直したのは、やはり珍しい三毛猫の雄だということ。そして当時夫は海外駐在員として留守であり、息子達に父親不在の為の淋しさを動物を飼うことによって補えないかと考えたからでもあった。
 猫の砂、キャットフードの土産付きで片手に乗る程の子猫が来たのは、小雪の舞う年の暮れだった。膝掛け毛布に電気アンカを入れた中で丸くなって眠る姿を二人の息子は見飽きることが無いようだった。早速男らしい「太郎」と名が付き、学校に行く前、帰宅後、競って「太郎」「太郎」でたちまち我が家の中心となった。
 足元をチョロチョロするために何度も踏みつけたり、カーテンを得意気に登り、降りられなくなったり、野良猫に脅えたり、太郎は毎日話題を作ってくれた。
 猫は家の中の決まった場所に、砂を入れたトイレを置いてやれば絶対失敗しない。また青畳を引っかくことも、何度か強く叱ることでやらなくなった。犬の様に散歩に連れ出す必要も無く、手間の掛からない動物と言えるのではないだろうか。
 海外に居る父親へ送る手紙の材料に事欠かない程、太郎は我が家で存在感のある立場となり、丸々と可愛く育った。それまでは、何とキザな言葉……と嫌っていた台詞「この猫、自分は猫だと思ってないみたい」と息子が言った時は、大笑いしながら、同感と思ったこともあった。
 そんなある日、息子の友達が太郎を見て、「この猫雌やんか」と言うではないか。自分も雄を飼っているから間違いないという。
 そんな馬鹿な、太郎は何万匹に一匹しか居ない、三毛猫の雄であり、そんじょそこらの猫と違う筈なのに……指摘するまま尻を持ち上げて見ると、成る程そこには有っても良い筈の玉が無い。何故今までそんな単純な事に気が付かなかったのだろう。それでも諦められず、ペット屋さんに見てもらったら「猫の小さい頃は、雄雌解りにくいんですよ」と慰められて、やっぱり雌猫だった。希少価値のある三毛の雄ではなかったのか……少々落胆はしたが、希少価値で無くなったと解っても我が家での太郎の立場は変わらなかった。但、雌となれば太郎ではおかしい。「ミーコ」「チーコ」雌猫らしい名前を呼んでみても反応しない。すでに自分の名前は太郎と覚え込んでしまっている。その後避妊手術を施し、事実上雄と変わらないこともあり、太郎のまま雄として年を重ねることになった。
 夫が帰国したらどう反応するかと興味を持ったが、動物の本能かすぐ「主」を見抜いた。
 出かける時は玄関のマットの上に座って見送り、帰りも足音や車の音を聞き分け、一番に玄関に迎え出る。夫の膝が一番好き。呼べば必ず返事が返る……。うっすら髭の生え始めた息子は父親を煙たがるが、太郎だけは変わらず夫の膝を求め続けた。
 今年の三月末、太郎が死んだ。
 十五歳余り、人間の歳で八十歳位の一生であった。この半年程は食欲が無い、食べ物を吐く、毛の艶が無くなる、やせる等で、最後は水も欲しがらず、正に人間の終焉を見る思いであった。息子達は太郎と兄弟のように育ち、小さい生き物に対する優しさを覚え、大黒柱に一目置くことを教えられ、そして独立して行った。私自身も太郎に慰められる日々がどれだけ多かったか。
 小さなダンボール箱を柩として庭の水仙等を入れていると、夫もキヤットフードを添えた。
 夫の運転する車で多賀斎場へ向かいながら「ありがとう」と小さい柩をなでてやると、十五年前、片手に乗る程の子猫の感触が思い出されてならなかった。

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